2017年6月26日

プラスティックとサファイヤガラス 時計の風防素材どれが良いのか?

 
時計修理でよくあるご相談なんですが、キズ付いた風防を交換するとき、どの素材が良いのか?
風防とは、時計のダイヤルや内部を保護するためにダイヤルの上に被うよう取り付けられたガラスや透明のガラス、またはプラスティックなどの通称。 衝撃、水圧、傷などから時計を守るために工夫が施され、耐久性、視認性が高められています。
 
近年の高級腕時計は、サファイヤガラス(クリスタルガラス)を純正で標準装備して、それをセールスポイントにしている時計が多いので、
 
「サファイヤガラスの交換費用はどのくらいかかりますか? 他の素材もありますか?」
 
というお問い合わせが特に目立ちます。素材によって、性能・ビジュアル・用途に違いがありますので様々ですが、大きく分けて3種類の素材がありますので、今回は時計風防のお話です。
 
人工サファイヤを原料としているサファイヤガラスの場合、強度は最上級といえます。 少々手荒くしてもキズが付きません。万が一、強い衝撃で傷が付いてしまうと、再生は難しく交換が必須となります。 他の素材の様に、通常の研磨機では削れないので純正をメーカーから取り寄せて交換するのが一般的です。平面タイプはだいぶ安価に流通するようになりましたが、それでも数万円しますし、ビジュアル性が高い球面タイプでは十数万円するものもあるなど未だ高価です。
 
無機ガラス(ミネラルガラス)というのは、善し悪しもありますがごく一般的な工業ガラスのことです。1940年以前のアンティークウォッチには必ず使用されていて、オリジナルに拘ってこれを選択するマニアも多いです。傷付きやすい割れやすいというデメリットがありますが、味わい的にアンティークの個体に似合うのは、やはり無機ガラスだと思います。
プラスティック(アクリル)は、現代の腕時計で最も使用されている素材です。 サファイヤガラスほどの強度はありませんが、粘性・弾力性において優れているので割れにくいというのが魅力です。 小さな擦り傷程度なら研磨で綺麗に除去できるという再生のメリットがあり、素材が安価なので交換コストに優れています。透過性や視識性の利点から高価格帯の時計でも、あえてこの素材の時計もあります。近年は強化タイプもあり汎用性が高まっています。
 
個人的には、時計が持つ魅力を引き出し、時計を使用する環境を配慮して素材を決めるのが良いと思います。風防のキズが気になる、交換を検討されている腕時計がありましたらA&Oに気軽にご相談下さい。

 
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