IWC Cal.89 修理 オーバーホール

IWC Cal.89 修理 オーバーホール

2020年4月5日
日々のこと

今回はIWCのCal.89の修理依頼。言わずと知れた時計技師アルバート・ペラトンが開発したムーブメントです。

内部は比較的綺麗な状態でした。全体的には基本施工で進めて問題無さそうです。

竜頭を引き出して時送りすると、スカスカと秒針が遅れて回る緩みを感じます。針を軸に留めるハカマの緩みかなと思って締め付けてみましたが、どうやら違うよう。 竜頭周りの部品の不良からくるもので、カンヌキ(445)とウラオサエ(435)の亀裂・摩耗が原因。 放っておくと、いずれ折れて竜頭がガタガタと空回りのような状態になります。これは交換した方が手っ取り早い。

関連しているオシドリ(443)、キチ車(410)も経年摩耗が見られますが微調整で何とかなりそう。

オシドリネジは、オシドリ(443)を留める部品です。強く作られていますが、部品の中でも消耗度が高い。これが最後折れると竜頭が巻き芯ごと外れる。経年痩せして竜頭の緩みを感じますからそろそろ変え時。

コハゼ(425)が折れて交換が必要。 コハゼは、ゼンマイを巻いたとき角穴車が逆回転する力を抑えるための金具で、概ねカタツムリのような形をしています。コハゼが割れたり、すり減ると、巻いたゼンマイがバネの戻る力で竜頭がカタカタと逆回転して止まらなくなります。他の部品よりも比較的強く作られてはいますが、古い時計を修理する中では交換が多い部品。

ゼンマイは現状で15時間くらいしか使い切れていない状態。本来なら24時間以上稼働するモデルのはず。経年の金属疲労によるトルク不足なので交換時期ということになる。まだ市場に在庫が豊富な部品なので純正で交換したいと思います。スイスの部品屋から適価で入手出来そう。

天真も摩耗が進んでいます。 天真はテンプと呼ばれる時計の心臓部を支える軸のこと。 高価な部品なので使いきって折れてしまってから交換でも構いません。折れると時計として全く動かなくなりますが、いじくりまわさないかぎりは二次災害に発展しません。