15年前、お店をOPENして暫くは、僕のことを『マスター』ってお客さんに呼ばれたり、誰かが僕のことを紹介してくれるときに『(この人が)A&Oカフェの春日さんです。』なんて認識してた人もいた。
決して間違いではないんだけど、その人のバックボーンが何なのか、どうして支出を賄ってるのか、客層やマーケットのこととか、要するにどうやってメシを食べている人なのか? そういう物事の本質を捉えられる人が少ないことに愕然としたこともあった。
7年くらいしてふと気がつくと、そういう人は僕の周りから自然に消えていった。というか、廃業・倒産していたり解雇されたとか縊首されたという噂まで耳にしたり… 競争社会に抗えず淘汰されていったという方が正確なのかな。
「いつか俺も春日さんみたいにカフェをやりたいんですっ。」
「カフェをやって何を売りたいの?」
「え、珈琲を一杯一杯丁寧にハンドドリップで炒れて美味しいって言ってもらえるだけで嬉しいなって。」
「そう、君もカフェで珈琲なのかぁ… 珈琲以外じゃダメなん?」
そんな意気揚々と夢を語る若者もいたけど、暫くして、寂れた商店街で小さなカフェをOPENして頑張ってるという噂を聞いて、数年後、僕がアンティークの仕事で近くまで行ってたのでお店を探したけど見つからず。
共通の知人の後日談によれば、OPEN当初はお客さんがたくさん出入りする店だったけど、食えるほど売上げが伸びず、競合店も増えてしまい、夜バイトで掛け持ちで体と精神を壊して、自分の店も畳んだとか。
日本の景気がダダ下がりしているご時世に、飲食店の内情というのはどこもそう簡単ではない。
とにかく、日本の若い子にいま言いたいのは、せめて英語を話せるようになって、とりあえず欧米の先進国都市やアジアで急発展してる都市で働く若者たちの現状を、直接自分で見聞してもらいたい。
たぶん、日本でカフェとかラーメン屋やろうなんて考えなくなります。