時計修理・分解掃除バナー

『文字盤再生(リダン、リダイアル)』についてのご案内

文字盤の素材および仕上げには、「塗り」「レタリング(転写)」「エナメル(琺瑯)」「ポーセリン(陶板)」「セルロイド樹脂」など様々な種類があり、弊社では30年前の創業以前よりこれらの修復をお受けしてまいりました。
しかし、近年寄せられるご依頼やご相談の多さとは裏腹に、文字盤再生の技術は日本国内に於いてはすでに「いにしえ」のものとなりつつあります。
 

文字盤再生を取り巻く現状と弊社の本音

本音を申し上げますと、文字盤再生は「仕上がりに極めて微細な精度を求められる」ため、弊社としても大変苦慮する領域でございます。
 
昨今の時計市場では「オリジナルの状態を維持すること」を強く求める傾向があり、文字盤を大きく書き換える(修復する)という高度な再生技術は、市場のカレント(潮流)とは真逆の領域でマイノリティー(少数派)に属しているのが現状です。
 
また、文字盤再生された時計個体は「リダン(re-done)、リダイアル(re-dial)」という専門用語で呼称されております。上記のような時計を資産価値として捉えリセールバリューが強烈に求められる市場では、これらの個体が概ね「マイナス要因」として受け取られることが少なくありません。修復に真摯に向き合ってきた側としては、このような市場のマインドセットをたいへん遺憾に感じております。
 
つまり、「需要が低い」というデメリットを数十万円という高単価で補わざるを得ず、事業全体としては決して利益性の高いものではありません。かつて日本国内にも存在した専門業者や職人も、採算が合わず相次いで廃業してしまいました。
 
この「オリジナル維持」の傾向は海外でも年々強まっており、需要の減退に伴って職人の数は明らかに減少しています。現在は「少ない依頼ながらも技術を絶やしたくないと、細々と経営を続けている職人が僅かに存在する」というのが世界的な現状です。なお、弊社が現在提携している海外の職人は非常に腕が良いため、世界中から依頼が絶えない状況です。
 
以下は、特にご質問やご相談が多い「エナメル(琺瑯)」「ポーセリン(陶板)」の文字盤再生について、過去にお答えした回答例をまとめたものです。ご依頼をご検討される際の参考材料としてお役立てください。
 

【重要】ご依頼前に必ずご確認ください(回答例と注意点)

 

  • 完全再生について

    すべての文字を寸分違わず忠実に再生を求められる場合、データー作成から転写版の型起こし、微調整と試し焼きを何度も繰り返すといった「完全再生」になるため膨大な作業工程と費用が掛かります。「コスト度外視で構わない」というご依頼者も過去いらっしゃいましたが、そうでもない限り、ご依頼発注に至ることは稀で、それでも仕上がりのご期待に応えられるかどうかまではお約束はいたしかねます。

 

  • フォント(書体)の再現について

    基本的には、トレードマーク等シルエットに代替が利かない部位は型起こしをして再生に専念します。インデックス(目盛り・数字)に使用されているフォントは、オリジナルに限りなく近い既製フォントを微調整・加工して採用します(または、複数の既製フォントをご提案し、お客様にお選びいただきます)。

    そのため、トレードマークや文字の微細な線の太さ・止め・ハネ・払い、盛り、配置、角度までを厳密に指定することはできません。

 

  • エナメル・ポーセリン等の「一発勝負」について

    特にエナメル(琺瑯)、ポーセリン(陶板)、セルロイド樹脂への「追い焼き」や「追い転写」は完全な一発勝負(不可逆的修理)であり、やり直しが利きません。万が一仕上がりにご満足いただけない場合でも、やり直しの受付はいたしかねます。また、仕上がりにおける「白肌の艶感」「アイボリー」「グレイッシュ」といった繊細な色調表現についても、すべて海外職人の感性と技術に委ねるという努力義務の範囲になります。逃げ道を作るような表現をしたくありませんが、その時計が持つ独特の雰囲気はリスペクトしながらも、「職人の手仕事として新しく生まれ変わる顔を受け入れる」覚悟と価値観が必要です。

 

  • 「焼き直し」による物理的な厚みの変化と施工不可の可能性

    エナメルおよびポーセリンの再生(焼き直し)は、施工の特性上、おそらく現状よりも厚みが増します。そのため、ベゼル封入の施工において問題が生じるケースがございます。

    ベゼルと文字盤の間にゆとりがない場合はベゼルか時計本体にまで加工も視野に入れる必要があり、ベゼルの加工が難しい(時計の強度や構造に問題が生じる)と判断された場合は、ご依頼をお断りするケースもございます。

 

  • 費用とキャンセルについて

    工程が非常に多く時間も掛かるため、費用は決して安価ではございません。「高額であれば諦める」というお気持ちが少しでもある場合は、ご依頼をおすすめいたしません。

    なお、お見積もり確定後、費用の半額を前納(着手金)として申し受けます。途中キャンセルされる場合、ご返金不可になります。万が一、仕様上の問題で施工不可能と職人に判断され、作業が中断・中止となった場合でも、発生した諸費用(海外への往復送料、雑費等)はお客様のご負担となりますので予めご了承ください。

 

*時計修理のご相談(お問い合わせフォーム)

 
『文字盤再生』の技術は絶やしてはいけません。
 


HOME | 修復・修理 | 腕時計、クロックの修理・修復・分解掃除・電池交換 | 『文字盤再生(リダン、リダイアル)』について